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対談 森田真弓先生 × 神谷美奈子

ハピコミおやこヨガを初めて導入していただいた保育スクール「よつばのクローバー」の創立者、
森田真弓先生(一般社団法人日本ナニー協会代表理事)に、保育現場で感じる親子関係について
お話を伺いました。

親子は一番小さな社会集団

神谷 森田先生、ご無沙汰しています。今日はまず先生がなぜナーサリーやナニー協会を立ち上げることになったのか、そのあたりからお話を聞かせてください。
森田 15年間、某ファストフード会社の人材育成に関わり、研修前のスタッフの質が年々低下しているように感じていました。例えば敬語が使えない、応用がきかない、会話のキャッチボールができない…。20歳を過ぎてからでは研修をしても難しいと感じていました。そんな彼らの生育歴を聞くと、どうも0才からの親子の関わりの質と量に関係があることがわかり、0歳からの教育という場で解決していきたいと考えたのがきっかけです。
神谷 先日、大学教授にインタビューしたところ、コミュニケーション能力がなくて就職活動でエントリーすら難しい有名大学の学生の話を聞きました。そこでも生育歴を聞いたらどうも親子の関わりが薄かったと聞きました。先生の立場から、乳幼児の親子関係の、最近の傾向を教えてください。
森田 目につくのが、叱るときに「いけない」「だめ」としか言っていない親。例えば走り回っている子に向かって「走っちゃいけないって言っているでしょ」と見たままを言っているのですが、子どもがどんな理由で走り回っているのかを考えてあげられず、声を荒げてその場を収めてしまう傾向にあります。本当は飽きちゃった、帰りたい、そう言いたくても言葉がでなくて走り回るという形になっていることもある。親のほうから「こういうこと?」と言葉を投げかけてあげないと、子どもは伝えられないのです。
神谷 大人に問題があるということですか?
森田 大人からしたらなんで言葉で言えないの?とイライラしてしまうかもしれませんが、理路整然に気持ちを言葉にできないのが乳幼児期の子ども。公共の場で走るのはいけないこと。怒りたくなるのはわかります。走ってはいけない理由をちゃんと説明する、走ってしまった子どもの気持ちを聞いて受け止める、これがないと子どもは僕のサインを理解してほしいのに受け入れ拒否が続くともういいか!と伝えることを諦めてしまいます。
神谷 コミュニケーションが成り立たなくなって、心の交流ができなくなるんですね。
森田 「もう飽きちゃったから帰りたい」と言えるまで道のりは長いです。乳幼児期、子どもは大人の都合でいろんなところに連れて行かれるし、あとどのくらい続くのかも伝えられていない。飽きちゃったよね、あと5分で終わるよ、と声をかけられると信頼関係ができてくる。大人が子どもを観察し、読み取り、言葉をかけると子どももきちんとわかるものなのです。
神谷 言えないだけでちゃんと分かっているんですね。
森田 赤ちゃんの泣き声にも自分のメッセージが入っています。親の想像力が欠けていたら「泣いている」その事実だけしか受け止められない。だからおろおろするし、赤ちゃんも自分のメッセ―ジを受け止めてもらえないのでもっと泣く。これは悪循環です。
神谷 「親力」という言葉が流行ったときがありますが、大人のほうが子育ての力をつけていかないと、子どもの力を伸ばしきれないかもしれませんね。
森田 そのとおりです。
神谷 親御さんたちは少なくとも社会で働き、コミュニケーションを図っていると思うのですが、自分の子育てになぜ応用が効かないのでしょう?それとも今仕事の中でもうまくいっていないのかしら?
森田 社会的な地位がある保護者の方でも子育てを別物として考えていることもあります。
神谷 先生が考える、親子のコミュニケーション・スキンシップが大切な理由は何ですか?
森田 「心の安定」「絆」。親子は一番小さな社会集団なので、そこでのコミュニケーションは一番基本で、成長にも欠かせないもの、です。

運動センスの基礎は5歳までにつくられる

神谷 脳の重量やシナプスの数の変化を追うと、2歳までにぐっと伸びますよね。発達を考えるとこの時期にいかに体に触れたり、目と目を合わせたり五感を使ったコミュニケーションを日常に取り入れるのがおすすめです。
森田 脳の発達は分野によって時期が異なります。例えば運動センスの基礎は5歳までにつくられるといわれています。神谷さんのおやこヨガで行っているコーディネーション能力は5歳までにどれだけ親と触れているか、運動しているか、コミュニケーションが遊びの中からとれているかで、基礎力が決まります。
神谷 楽しくコミュニケーションをとりながらの遊びでお薦めがあれば教えてください。
森田 「よつばのクローバー」では、0歳児にはバランスボールをよく使います。赤ちゃん期にバランスボールに座らせるトレーニングを行うと背骨がまっすぐになり、尾てい骨に力を入れる感覚を自然に学習することができます。また転ぶ練習、転がす練習にも使います。フラフープを使ってトンネルくぐりやジャンプをします。道具を使わないときは、動物歩きをしますよ。
神谷 動物歩きはおやこヨガでもやります!ゴリラやペンギン、ライオンなど。フラフープくぐり楽しそうですね。おやこヨガでは、三角のポーズをしている親の下を子どもがくぐったりしています。
森田 おやこヨガは、親子の触れ合い、体遊び、親子一緒に体を動かすこと、そして発達に必要な要素が組み込まれています。3歳まではマネをする時期。マネをして自分で考えて体を動かすのはセンスが必要です。継続してやることでどこをどうやって動かすとこうなる、というのがほんの少しずつ子どもの体や脳に蓄積されていくんですよ。
神谷 逆にマネをするようなことをしていないとセンスが磨かれないのですか?
森田 そのとおりです。自分の体をどう動かすか。大人は当たり前のことでも乳幼児期の子どもにとってはマネでしか覚えていく方法がないのです。小学校になってスキップができない、跳び箱ができない、鉄棒ができない、これもどう動かしたらどうなるかわからないからできないんですよ。
神谷 小学生の男の子が顔面を打って死亡した、という新聞記事を読んだことがあります。転びそうになったら手をつく、という反射神経が退化しているように思います。
森田 最近の傾向は、転ばせないようにする。本来であれば転び方を教えて、安全に遊べるように親が教えないと、命の危機になってしまうかもしれないということです。

発達障害は、つくられる

神谷 おやこヨガの現場で、発達障害のお子さんがいるケースが増えています。
森田 小学校では発達障害のお子さんが1クラスに5、6人、グレーゾーンのお子さんが10人くらいいるといわれています。
神谷 そんなに多いんですか。
森田 話を聞けない、落ちつきがない、座っていられない…。すべて障害とはいえないかもしれませんが増えているといわれています。これも0~6歳までの過ごし方が重要だと考えています。例えば脳の発達を考えると、22時~2時はとても重要な時間。成長ホルモンが出る時間帯です。この時間寝ることが大切なのですが、生活リズムが乱れて夜遅くまで起きている生活がつづくと後で影響がでてきます。夜遅くまで起きていて食欲がわかず朝ごはんぬきで保育園や学校に行く。そうなると低体温にもなるし、午前中はボーっとして過ごすことになる。だからやる気も起きないのです。
神谷 寝る子は育つっていいますもんね。話を聞けない、についてはじっと聞く、双方向のコミュニケーションの経験がすくないからですか。
森田 テレビをつけっぱなしで会話なしの食事時間なら、話すことは少なくなってしまいます。家事が忙しくて子どもと話をする余裕がない、とおっしゃるお母さんの状況はわかりますが、家事は子どもが寝た後や休日にまとめてやったりしてほしいです。子どもが家事をしているときにまとわりついてくるようなら「聞いて欲しい」のサイン。聞いてあげてほしいです。
今学校では、いじめる側、いじめられる側のどちらかに属すといわれています。親との関係でコミュニケーションがとれていないと、学校であったことを親や先生に伝える力もできません。乳幼児の育児をしていると先を想像できないかもしれませんが、ぜひ想像力を駆使して小学生になったとき、中学生になったとき、大人になったときにどんな子であって欲しいか、を考えてコミュニケーションを図って欲しいです。タイミングを逃すと手遅れになってしまいますからね。
神谷 さて「発達障害はつくられる」という観点に戻ると、例えばおむつはずしなんかも年々遅くなっている気がします。昔はおむつはずしは1歳で、と言われていました。
森田 子どもの腸は8か月で発達しているので、1才半~2才で脳から排泄の指令はできあがっています。その時期におむつとさよならできれば自信がつくし、自立心も強くなります。おむつはずしは親がよく観察してはじめるタイミングを見つけることも大切です。2才を超えると自我が芽生えているので、おむつをしていることが普通のことになり、脳の働きにも影響がでます。鈍感になるというか…。
神谷 子どもが持っている能力を見極めて、適切な時期に働きかけをしたほうがいいんですね。最近ではベビーカーの対応年齢が4才までなので、幼稚園に通っているようなお子さんがベビーカーに乗っているのを見かけます。先生はベビーカーをお持ちでないとか?
森田 自分への戒めで使っていません(笑)。2才でもしっかり歩きますよ。ベビーカーも紙おむつも使ってはいけないのではなくて、使い方を考えて使った方がいいと思っています。あればどんどん頼るし、それにともなって子どもの脳の発達はスローになっていきます。子どもも3年も生きていればちゃんと記憶として残るのです。ベビーカーにいつも乗らせてれているのに突然「歩きましょう」と親が言ったら、「なぜ歩かなきゃいけないの?」と不満がでてきます。子どもが歩きたいといったときに親の都合で急ぐからベビーカーに乗せていたことがあるはず。子どもも楽な方がいい。でも歩かなければ脳は発達しないんです。
本来は歩いたり遊んだりするなかで、指先や足や体全体を使い刺激を受けて発達していけるのに大人がチャンスを奪っています。ちょっとした時に頼るのであれば非常にいいもの。それが当たり前になるといいとは思えません。
神谷 子どもの成長や変化に気づいてあげると子どもも意思を伝えてくれる。おむつはずしひとつをとっても大切な親子のコミュニケーションなんですね。
神谷 最後に森田先生からメッセージをどうぞ。
森田 今は情報に溢れ、何をどう選んだらいいかわからなくなっている時代です。子どもの本来もっている力を信じて伸ばすのも、つぶしてしまうのも親御さんです。ちょっとしたことでも困ったらぜひ私たちの保育園に気軽に相談に来てほしいと思っています。一人で悩まずに、一緒にお子さんの可能性を伸ばしていきましょう。


■プロフィール
森田 真弓 (財)日本ナニー協会理事長、(株)エデュケイト 代表取締役。
保育スクール「よつばのクローバー」を板橋にて開業し、脳育という切り口で幼児教育に当たっている。15年ファストフード会社で人材育成を経験し幼児教育に参入した。他の園と異なるのは、子どもを伸ばすには親子の関係が大事ということで、送迎時のマザーリングと隔月で親子参画日を設けている。

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